ARTISTS

SATOMIMAGAE

Photo credit: Mana Hiraki

Photo credit: Mana Hiraki

東京を中心に活動しているアーティスト。ギター、声、ノイズで繊細な曲を紡ぎ、有機的と機械的、個人的と環境的、暖かさと冷たさの間を行き来する変化に富んだフォークを創造している。
彼女の音楽的ルーツは中学生の時にギターを始めたことから始まる。父親がアメリカからテープやCDに入れて持ち帰った古いデルタ・ブルースの影響もあり、10代の頃にはソング・ライティングの実験をするようになる。その後PCを導入したことで、より多くの要素を加えた曲を作ることができるようになり、彼女の孤独な作業はアンサンブルへの愛に後押しされるようにななった。大学で分子生物学を専攻していた時にバンドでベースを弾いていたことから、様々な音の中にいることへの情熱と生き物や自然への情熱が交錯し、それが彼女の音の世界を育んでいったのである。
この間、アンビエント音楽、電子音楽、テクノなどの実験的でヴォーカルのない音楽に没頭するようになり、聴き方の幅が広がっていった。サンプラーを手に入れ、日本のクラブやカフェでのソロライブを始めた。苗字と名字を融合させた「サトミマガエ」は、彼女の独特のフォークトロニックな考察を伝える公式キャラクターとなった。
初期のアンビエント・フォーク・シンセサイザーを集めたファースト・アルバム『awa』(2012年)は、ローファイ/DIYのセルフ・レコーディング技術を駆使した作品である。2枚目のアルバム『Koko』(2014年)では、彼女は控えめでライヴ感のあるパフォーマンスと、フォークの伝統に馴染んだ温かく牧歌的なエネルギーの冷却を追求した。続いて、『Kemri』(2017)では、より豊かな和音とリズムで伝えられる人間的な感覚に触発されて、この効果をバランスよく調整している。彼女の2作品をリリースしたレーベル、White Paddy Mountainとそのディレクター畠山地平の影響を受けて、スタジオ環境の中でよりコンセプチュアルな方向に進むことができたが、彼女の作曲やレコーディングのプロセスは、自分で作ったものであることに変わりはない。
そしてNYの最先鋭レーベル、RVNG Intl.へ移籍してのリリースとなる『Hanazono』では、URAWA Hidekiのエレクトリック・ギターとバード・コールが加わったことで、子供のような魅力を持つSatomiの微細なヴィジョンが融合している。Satomiの妹であり、アルバムやウェブサイトのすべての作品を担ってきたNatsumiの直感的なビジュアルが、温かみのあるものとクールなもの、手作りと機械で作られたものが混ざり合うというSatomiの夢を、彼女の別世界への窓のように機能する木版画で見事に表現している。


PAULINE ANNA STROM

サンフランシスコを拠点に活動しているコンポーザー。自然、空想科学小説、古代の歴史に触発されたニューエイジ〜アンビエント・ミュージックを創造している。彼女は生まれてから盲目で、ニューオーリンズの近くで育ち、子供の頃は多くのクラシックやオーディオ・ブックを聴いて過ごす。その後彼女は結婚し、サンフランシスコに引っ越した。そこで、彼女はインディペンデント・ラジオ局KPFAの番組「Hearts of Space」を発見し、クラウス・シュルツェ、喜多郎などのニュー・エイジ〜アンビエント・アーティストの音楽に魅了される。そして電子オルガンを購入した後、いくつかのシンセサイザーとTascam4トラックレコーダーを手に入れる。彼女は音楽創作に没頭し、朝方まで取り組むこともしょっちゅうであった。やがて彼女は、Ether Ship Collectiveの創設者であるLemon DeGeorgeとWillard Van De Bogartに出会い、彼らのプロデュースの元、デビュー・アルバムである1982年の『Trans-Millenia Consortをリリース。一部で注目されたものの、その後はあいまいとなる。そして幾つかの問題があり、Ether Shipとの関係も終了し、自らレーベルTrans-Millenia Consort Recordingsを立ち上げ、幻覚的なサウンドの『Plot Zero』、そして『Spectre』をヴァイナルでリリース。しかしお金を使い果たし、ヴァイナルのリリースは諦め、4年後に2度目の結婚をした後、1988年に4つのカセットをリリースした。その後は経済的な問題のため機材を売却し、スピリチュアルヒーラーおよびレイキマスターとしてのビジネスに専念。しかし近年のニュー・エイジのリヴァイバルで注目を集め、2017年にRVNG Intl.が音源をコンパイルした編集盤『Trans-Millenia Music』をリリースし話題となる。そして30年以上の時を経て新作のリリースが決定したが、2020年12月14日にRVNG Intl.から他界したことが発表され、結果的に遺作となってしまった。


HELIOS

米ペンシルバニア出身のプロデューサー、Keith Keniffによるプロジェクト。様々なサウンドトラックやCM音楽など多岐に渡る音楽制作や、ポスト・クラシカル的な路線のGoldmund、奥方ホリーとのユニットMint Julep、双子の兄弟とのSONOとしても名を馳せるが、本名義では2004年からエレクトロニカ的なサウンドをみせている。かつては老舗レーベルMerckやTypeから作品をリリースし、その後は自身のレーベルUnseen Recordsからリリースを重ねていたが、Ghostly Internationalと契約し、2018年に『Veriditas』をリリースした。
Heliosとしては2009年には来日し、Goldmundとしても数度来日を果たしている。


TOBACCO

ペンシルバニアのエクスペリメンタルアーティスト、Tom Fecのレコーディング・プロジェクト。エレクトロ・サイケデリック・バンドBlack Moth Super Rainbowでダークでビート中心の分派として登場して以来、TOBACCOは完全に独自のものへと変貌を遂げてきた。過去20年間、Fecの私生活を謎に包まれており、音楽にのみ焦点を当て続けてきた。アンチコンからの2008年に『Fucked Up Friends』を、そして2010年の同レーベルから『Maniac Meat』をリリースし、その後Ghostly INternatinalへと移籍し『Ultima II Massage』、そしてテープデッキにダメージを受けた2016年の『Sweatbox Dynasty』をリリースしてきた。そして再びGhostlyからのリリースとなる最新作が本作「Hot Wet & Sassy」。
TOBACCOはNine Inch Nailsとのツアー、HEALTHやWhite Zombieのリミックス、HBOシリーズ「Silicon Valley」のテーマ曲提供、BeckからAesop Rockまでをプロデュース、2019年にはMalibu Kenとして後者とのコラボアルバムをリリースするなど、多岐に渡る活動をしている。Fecがミュージシャンとしての彼のマークをどこに着地させても不気味だ。Boards of Canadaや初期のDef Jamのレコード、Gary Numan、あるいはパブリックアクセスのテレビや80年代のホラー映画の悪いVHSのダビングなど、体の一部を切り取ったような音が聞こえてくる。あるいは、太陽が爆発して、今まで愛してきたものが溶けてしまうような瞬間も垣間見え、結局、TOBACCOは瞑想音楽を作ろうとしているだけなのかもしれない。カテゴライズ不可能な現代の異才のひとり。


KHOTIN

Photo by Lindsay Mcnab

Photo by Lindsay Mcnab

カナダはエドモントンを拠点に活動しているプロデューサー、Dylan Khotin-Footeによるソロ・プロジェクト。最初期はHappy Trendy名義で活動していたが、2014年にKhotinへと変名。様々なアーティストを輩出するカナダの優良カセット・レーベル1080pからファースト・アルバム『Hello World』をリリースして注目を集め、2015年にはMUTEK Montrealに出演。2017年には『New Tab』をセルフ・リリース(ヴァンクーバーのPacific Rhythmがヴァイナル化し、日本ではScentがCD化)にて発表した後、2018年に『Beautiful You』をリリース。各所で絶賛され、Ghostly Internationalとの契約と至る。そして翌年同レーベルからヴァイナルもリリースされた。
Khotinのアプローチは実に多彩で、穏やかなシンセのアトモスフェリックなものからヒプノティックでダンサブルなものまでを横断し、印象的でドリーミーなサウンドを展開。サウンドのバランスや安定感が絶妙で、その心地よいリスニング感はジャンルの垣根を越えて注目度が高まっている。


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