Photo by Louie Perea

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現在数々の2025年の年間ベストに選出されている、デヴィッド・シルヴィアンを共同プロデューサーに迎えたLucrecia Daltのニュー・アルバム『A Danger to Ourselves』に収録されている「caes」をY La BambaのLuz Elena Mendoza、Niño de Elche、そしてVictor Herreroとともに再構築した新たな作品「caes (a suerte)」を突如発表しました。
すでに公開されているオリジナル版、そしてNick Leonによるリミックスを加えた3曲入りEPとしてデジタル・リリースされています。

「もし落ちるとしたら、あなたはどこに落ちる?」

『A Danger to Ourselves』が残した緊張と余韻、その影から立ち現れるようにして生まれたのが、Y La BambaのLuz、Niño de Elche、そしてVíctor Herreroによって再構築された新たな作品「caes (u suerte)」である。

Camille MandokiをフィーチャーしたDaltの不協和で陶酔的なオリジナルをいったん解体し、「caes (u suerte)」はその核心だけを丁寧にすくい取る。幾重にも折り重なる魅惑的なヴォーカル・ハーモニーが楽曲を包み込み、質感を帯びたミニマルなパーカッションの断片と、Herreroによる静謐で注意深いアコースティック・ギターが、確かな重心を与えていく。そこに立ち上がるのは、過剰な装飾を排した、親密で張りつめた音の空間だ。

「caes (a suerte)」は、危うさとともに歩んできたLucrecia Daltの一年を静かに締めくくる“ブックエンド”のような存在でもある。本作は、2026年3月・5月・6月に予定されているUS、UK、ヨーロッパ・ツアーの発表と呼応しながら、同時に彼女自身の誕生日という私的な時間とも重なり合う。公と私、構築と解体、その境界線に立つ一曲と言えるだろう。

今、耳を澄まし、その落下をたどってほしい。
最もリアルで、最もシュールな場所へと届く音に身を委ねながら。

 

Lucrecia Dalt New EP “caes” out now


Artist: Lucrecia Dalt
Title: caes EP
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Format: Digital EP
Listen / Buy: https://lucreciadalt.bandcamp.com/album/caes-ep

Track List:
01. Lucrecia Dalt – caes (featuring Camille Mandoki)
02. Y La Bamba, Niño de Elche, Victor Herrero, Lucrecia Dalt – caes (u suerte)
03. Lucrecia Dalt – caes (Nick León Dub)

Music by Lucrecia Dalt and Alex Lazaro
Mastered by Heba Kadry, NYC (track 1) and Kassian Troyer, Berlin (tracks 2 & 3)
All instruments performed by Lucrecia Dalt except:
Percussion by Alex Lazaro
Electric bass and contrabass by Cyrus Campbell

Lucrecia Dalt, Y La Bamba, Niño de Elche, Victor Herrero – caes (u suerte) [Official Audio]

YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=if4aj9Obzlo

 

Lucrecia Dalt New Album “A Danger to Ourselves”


Artist: Lucrecia Dalt
Title: A Danger to Ourselves
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-238
Format: CD / Digital

※日本盤ボーナス・トラック2曲収録
※解説:野田努 (ele-king)
※歌詞・対訳付き

Release Date: 2025.09.05
Price(CD): 2,200 yen + tax


2022年にリリースした『¡Ay!』が英『The Wire』で年間ベスト1位を獲得し、MUSIC MAGAZINE誌でもロック(ヨーロッパほか)で年間ベストに選出されるなど一躍注目を集めたコロンビア出身、ドイツはベルリンをベースに活動しているエクスペリメンタル・アーティスト、Lucrecia Daltの待望の新作アルバム。
デヴィッド・シルヴィアンを共同プロデューサーに迎え、フアナ・モリーナやCamille Mandoki等豪華ゲスト陣も参加し、集大成であると同時に出発点とも言える新たな傑作が完成。

コロンビアのペレイラで生まれたルクレシア・ダルトは、音楽愛好家の家庭で育ち、9歳のときにギターを手にするよう勧められた。ダルトはこの創造的な衝動に従い、コンピュータを使った制作に魅了され、土木技師としての急成長のキャリアを捨て、メデジンからバルセロナ、そして最終的にはベルリンへと移り住み、そこで自身の独特で冒険的なサウンドを発展させた。彼女の作品は、RVNGに移籍してから『Anticlines』(2018年)、『No era sólida』(2020年)、そして2022年に発表した特筆すべき画期的なSFボレロ・アルバム『¡Ay!』の3作をリリースし、その過程で、『On Becoming a Guinea Fowl』(2024年)、HBOのシリーズ『The Baby』(2022年)、そして近日公開のサイコホラー『Rabbit Trap』などの映画音楽制作にも活動の幅を広げ、サウンド・インスタレーションやパフォーマンスでは、彼女の光り輝く転調と独特で進化するヴォーカル・アプローチを披露している。

このたびリリースとなる『A Danger to Ourselves」は、ダルトが『¡Ay!』のツアー中の生活や新しい人間関係の形成期に書き留めた断片的な宣言から生まれた。彼女は2024年1月に、これらの親密な断片を音楽的な構成に結晶化させ始め、目的のある曲群を徐々に形にしていった。アルバムのサウンド構成は、コラボレーターのAlex Lázaroが提供するダイナミックなドラム・ループを基盤としており、そのパーカッシヴなバックボーンは、『¡Ay!』と同様、ダルトの重層的なヴォーカルのキャンバスとなった。従来のメロディックな構造に従うのではなく、このアルバムはベース・ライン、リズム、作曲デザインの相互作用によって音楽性を生み出している。大胆なプロダクションの選択と緻密なレコーディング・テクニックによって、声と楽器が新たな深みと輝きをもって調和する、ダルトの妥協のない音の明瞭さへの探求を明らかにしている。

明確に反コンセプチュアルな『A Danger to Ourselves』は、ダルトが音楽そのものに遮るもののない集中を導く詩的な本能であり、楽曲の枠組みを超越するボーカルと、原始的でロマンチックなスリルのきらめく響きを探求している。ダルトの細部への明晰なこだわりは、あらゆる小節に感じられ、献身的な姿勢が同心円を描きながら、個人的なものと霊的なものを統合する場を形成している。直感的な実験から生まれたこのアルバムは、シンプルなジェスチャーと複雑な構成を用いて、スペイン語と英語の間を伸縮自在なサウンドスケープと魅惑的な聴覚コラージュを通して行き来する「divina」のように、彷徨うようなラインを織り成している。

アルバム・タイトルは、デヴィッド・シルヴィアンの歌詞「cosa rara」から生まれたもので、人生の儚さ、愛の揺らぎ、奇跡への憧れを象徴的に映し出している。『A Danger to Ourselves』は、こうした超越的な状態を映し出し、人間の複雑な絡み合い、より啓示的な内面世界へ向かうドーパミン・スパイラルや一般的な経路からの解放への願望を屈折させている。高名なアーティストが多数参加したコラボレーションのコラージュであり、シルヴィアン自身も『A Danger to Ourselves』で共同プロデューサーとミュージシャンの二役を演じた。また、フアナ・モリーナが「the common reader」で共同作曲と演奏を、Camille Mandokiが「caes」でヴォーカルを、Cyrus Campbellがエレクトリック・ベースとアップライト・ベースの基礎を、Eliana Joy が複数のトラックでバッキング・ヴォーカルとストリングス・アレンジを担当している。

『A Danger to Ourselves』の光り輝く深淵において、ダルトは、音の錬金術を通して個人的なものが普遍的なものとなる深遠な変容を演出している。このアルバムは、集大成であると同時に出発点でもあり、彼女のこれまでの実験的な旅が、驚くほど親密でありながら広大なものへと収束する入り口でもある。感情的な啓示が網の目のように張り巡らされており、各曲は、ダルトの歌声が新たなハーモニーの領域を超えて啓示を体現する、脆弱性の的確に示している。従来の境界を超えた直感の生きた記録を創り上げ、音楽が鏡となり窓となる世界へと導いている。


TRACK LIST:

01. cosa rara (ft. david sylvian)
02. amorcito caradura
03. no death no danger
04. caes (ft. camille mandoki)
05. agüita con sal
06. hasta el final
07. divina
08. acéphale
09. mala sangre
10. the common reader (ft. juana molina)
11. stelliformia
12. el exceso según cs
13. covenstead blues
14. mabe fratti − cosa rara (en la playa) *
15. cosa rara (matias aguayo’s dopamine dub) *

* = Bonus Track

Concept by Lucrecia Dalt
Music by Lucrecia Dalt and Alex Lazaro
Produced by Lucrecia Dalt and David Sylvian
Mixed by David Sylvian
Mastered by Heba Kadry, NYC
Lacquers cut by Josh Bonati *Vinyl only credit
Cover photo by Yuka Fujii
Photo retouching by Louie Perea
Design by Will Work For Good

Lyrics and vocals by Lucrecia Dalt except “cosa rara” by Lucrecia Dalt and David Sylvian; and “the common reader” by Lucrecia Dalt and Juana Molina
Vocals on “the common reader” by Lucrecia Dalt and Juana Molina
Vocals on “caes” by Lucrecia Dalt and Camille Mandoki
Backing vocals on “amorcito caradura”, “no death no danger” and “covenstead blues” by Eliana Joy
Backing vocals and howls on “divina” by Alex Lazaro

All instruments performed by Lucrecia Dalt except:
Percussion by Alex Lazaro
Feedback guitar on “cosa rara” by David Sylvian
Electric guitar solo on “covenstead blues” by David Sylvian
Electric guitar on “stelliformia” by Alex Lazaro
Electric bass and contrabass by Cyrus Campbell except
Electric bass on “mala sangre” by William Fuller
Soprano and tenor saxophone by Chris Jonas
Violin by Carla Kountoupes and Karina Wilson
Cello by Amanda Laborete
Palms and finger snaps by David Sylvian and Alex Lazaro

All instruments and vocals recorded by Lucrecia Dalt except strings recorded by Marc Whitmore and vocals by David Sylvian, Camille Mandoki and Juana Molina by the artists themselves.
String arrangements in “hasta el final” by Lucrecia Dalt and Eliana Joy

 

 

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